美しき九州 「大正広重」吉田初三郎の世界
「大正広重」吉田初三郎の世界編 益田 啓一郎
極端にデフォルメされ、魚眼レンズで覗き込んだかのような鳥瞰図は初三郎の代名詞だが、商業絵師として描いた企業ポスターやパンフレットにも注目してほしい。たおやかで美しい美人画を描いたかと思えば、愛嬌のあるマンガのような挿絵を描いたりと、とても同一人物が描いたとは思えないほどその作品の雰囲気は様々。また、その鮮やかで独特な色使いも目を引く。
本書では九州というテーマで初三郎の作品が収録されている。最大の支援者であった油屋熊八(亀の井ホテル創業者)との関わり。当時まだ知られていなかった別府などの温泉地・名勝地が初三郎の絵とともに全国に知られる観光地となっていった話はとても興味深い。初三郎を詳しく知りたい人だけでなく、単に絵を眺めるだけでも楽しい。
【目次】
第1章 吉田初三郎と九州観光
初三郎作品の魅力
パノラマ地図の誕生
泉都別府に夢を賭けて
日本新八景と国立公園
戦中・戦後の活動
第2章 パノラマ地図の世界
都市の「発展」を記念する(都市図)
拡がる鉄道と沿線(鉄道沿線図)
温泉王国九州(温泉・旅館図)
神々の九州(神社図)
外地への夢(外地図)
その他の作品
研究概要・資料
印刷技術の進化と初三郎作品
初三郎の作品に出会える所(九州・山口編)
吉田初三郎略年表
吉田初三郎研究の課題と活用
吉田初三郎作品リスト(九州・山口編)
協力先・参考文献一覧/研究会のご案内 著者略歴
- 益田 啓一郎
マスダ・ケイイチロウ - 昭和41年大分県生まれ。九州デザイナー学院卒業。合資会社アソシエ運営の傍ら、アンティーク絵葉書研究や近代写真資料の掘り起こしをライフワークとする。また、福岡・冷泉地区自治連合会記録係として「冷泉のあゆみ?まちづくり戦後史」を執筆編纂。同誌のWEB版は第14回マイタウンマップ・コンクールにおいて優秀賞を受賞した。地域近代世相史の取材編纂や博物館等の企画展示も手がける。著書に「ふくおか絵葉書浪漫」「美しき九州?『大正広重』吉田初三郎の世界」(いずれも海鳥社)などがある。博多カレンダー委員会委員、日本絵葉書会九州支部幹事、日本国際地理学会会員、福岡市西区まるごと博物館推進会会員。