天草本いそっぽの物語
絵・訳 加藤 睦子
1590(天正18)年に帰国した天正遣欧少年使節。彼らはイタリアルネッサンス期の豪華な装飾や家具、絵画、楽器など、ヨーロッパの優れた文物を天草に持ち込んだ。当時の天草には、イエズス会の教会が30ほどあり、60人ものパアドレ(宣教師)やイルマン(修道士)がいた。コレジョ(9年制の大学)や美術学校、修練院などの教育施設も建てられ、キリシタン文化が花開いていた。特筆すべきは、使節団によって持ち込まれた銅活版印刷機による日本初のローマ字本が刊行されていたこと。天草で発行された「天草本」のほか、「島原加津佐本」、「長崎本」など29冊が出版されている。(本書「いそっぽの物語・考」より)
本書は『天草伊曾保(イソップ)物語』を日本語訳。温かい挿絵をあわせて1冊の本にまとめた。原本には安土桃山時代の標準語である「京ことば」がそのまま残されており、訳にあたっては当時の発音をそのまま残すよう心がけた。おじゃる言葉の軽快かつユーモラスなリズムは、子供から大人まで幅広い世代に楽しんでいただける。 著者略歴
- 加藤 睦子
カトウ・ムツコ - 福岡県柳川市に生まれる。福岡教育大学美術科卒。同大在学中に福岡県展にて、県知事賞受賞(油絵)。西日本女流絵画展、文部省県展選抜展招待出品など絵画活動後、高校教諭として勤務。1971年アーティストとして米国永住権を取得。現在、サンフランシスコ在住。1980~86年、サンフランシスコに「ギャラリー・シオー」開設。2014年、童話「神さまって ほんとうにいるの?」が、日本こどもの絵本研究会選定図書に選ばれる。2015年、福岡県朝倉市美奈宜の杜に「ギャラリー・シオー」開設。柳川同人誌「ほりわり」の表紙絵を25年担当。北原白秋生誕百周年を機に、同誌に童話を発表し始める。絵本、童話、歴史小説を出版、個展を開催するなど、作家、画家として活躍中。