鳳凰木の花散りぬ
なつかしき故郷、台湾・古都台南著者 今林 作夫
一年半振りに降り立った台南駅はさすがに懐かしく、それでいて何となくよそよそしかったことを覚えている。私たちは駅前で俥を二台拾うと、母の俥を先導に一路我が家へと向かった。麻の九時頃だったと思う。鋪装されている駅前広場はしっとり濡れていた。そして広場のど真ん中のガジュマルの木も、その雨にすっかり洗われてたからだろうか、黒々と見えるほど黒い緑の塊となって、私達の目の前に立ちはだかっていた。(本文より)植民地・台湾で日本人はどのような暮らしをしていたか。日本人が植民地とした台湾・台南市で生まれ、幼少期を過ごした著者が描く家族の物語。日本と台湾。二つの文化の中で暮らした十数年の日々が鮮やかに蘇る。
著者略歴- 今林 作夫
イマバヤシ・サクオ