鳳凰木の花散りぬ

なつかしき故郷、台湾・古都台南

一年半振りに降り立った台南駅はさすがに懐かしく、それでいて何となくよそよそしかったことを覚えている。私たちは駅前で俥を二台拾うと、母の俥を先導に一路我が家へと向かった。麻の九時頃だったと思う。鋪装されている駅前広場はしっとり濡れていた。そして広場のど真ん中のガジュマルの木も、その雨にすっかり洗われてたからだろうか、黒々と見えるほど黒い緑の塊となって、私達の目の前に立ちはだかっていた。(本文より)植民地・台湾で日本人はどのような暮らしをしていたか。日本人が植民地とした台湾・台南市で生まれ、幼少期を過ごした著者が描く家族の物語。日本と台湾。二つの文化の中で暮らした十数年の日々が鮮やかに蘇る。

著者略歴
今林 作夫
イマバヤシ・サクオ

鳳凰木の花散りぬ

A5判 並製/280頁
定価 1980円(本体1,800円)
ISBN 978-4-87415-811-1
C0095
2011年3月発行

キーワード:
カテゴリー: 社会