新装版
反芸術綺談
著者 菊畑 茂久馬
あの時、ついに芸術は成ったのか?1950年代末から60年にかけて日本列島を駆け抜けた反芸術の嵐は何だったのか。「反芸術の旗手」が九州派、そして自らの芸術活動を振り返る痛烈なるドキュメント。「要するに、これまで芸術を支えてきた理念が、ここ二十世紀も末に至って、とうとう木端微塵に瓦解したと早合点して、その虚構の反惜定の上で暴れ回ったのであります。(略)人類の歴史が営々とつちかってきた芸術の伝統を、すべて制度的な形骸と見誤ったのであります。しかし、しかしながら生涯の中で、あの時ほど身も心も歓喜の法悦にとろけたことはありません。このように、神を恐れぬ芸術に対する謀反や反逆は、早晩天罰が下って自滅するしかないのですが、しかし、この抵抗と挫折史をいろどる数々のエピソードには、まさに、まぎれもなく転換期芸術の巨大な歴史の歯車を回そうとしたドン・キホーテの、きらめくような純粋な精神の輝きが見えるのであります。」(本書「まえせつ」より)
著者略歴- 菊畑 茂久馬
キクハタ・モクマ - 1935年、長崎市に生まれる。著書に『菊畑茂久馬著作集』全四巻、(1993-1994年、海鳥社)『絶筆 命の炎』(1989年、葦書房)『絵かきが語る近代美術 高橋由一からフジタまで』(2003年、玄書房)などがある。