コラム◎ 大濠の季節 補遺 勝瀨志保
寒露 かんろ 10月8日
近年の季節変動は温暖化の影響を受けてめまぐるしい。大濠の季節の移り変わりを春、夏、秋、冬と節気で追いかけてはや幾年。こんなに狭い区域でも日照や雨の多少、気温の上がり下がりで、毎年かなりのずれがでる。そんな年毎の変化と、新しくであった事象を拾う。
今期最後のアゲハチョウの仲間の幼虫が、ユズの葉を丸坊主にしながらスクスクと育った。体の割には大きな頭部、額と眉間に複雑な曲線で微妙な色彩のカチューシャが二本、その両端にきらめく星が入った大きな瞳。白い縁取りがムシャムシャと葉を平らげる口かと見紛う。
しばらく眺めていたら、おもむろに動き出す。枝の分かれ目にさしかかった時に気づいたのだが、口だと思った先端から丸く小さな別の頭がのぞいている。右に左に振って行き先を見定めている様子。軟らかいけれども亀のように頭部が収納できる甲羅様式だったのだ。ジッと休んでいる間だは頭をしまい込んでるらしい。
背中の大きな瞳は目力、餌食を探す小鳥に対する威嚇用のようだ。顔には点のような単眼が三つ、模様もなければ、造作も至って単純。それに頭に近い脚には小さいけれども、しっかり尖った爪があった。のっけから芋虫とは恐れ入る。だけど小さな生き物の営みも季節の移り変わり。芋虫がいなければ優雅な姿の蝶は飛ばない。