コラム◎ 大濠の季節 補遺 勝瀨志保
処暑 しょしょ 8月23日
屋内で人は残暑に伸びてるけれど、人口密度がまばらになった野外で虫たちは元気。つぶらな瞳のイチモンジセセリが、満開のヒマワリの花を次から次に訪れ、吸蜜に勤しんでいる。あのヒマワリは花の束、この星形の一つ一つが雄しべと雌しべを備えた花一輪。その筒の底に蜜がたまっている。頭の大きさに比較すると、複眼がやたらでかく、セセリ類はくっきりした焦茶色だから余計目立つ。
池から少し離れた木立の薄暗い場所に、まだ未成熟のベニイトトンボの雌を見つけた。体が整うまでここで静かに待ち、産卵できるようになったら雄がたむろする水辺近くへ下りていく。すっかり胴が赤くなったリスアカネが水面から突き出た枯れ枝に止まる。あまり縄張りは広くないらしく、パトロール範囲は狭い。いつも同じ枝に、同じ方向を向いて、同じ格好で落ち着く。
この時期おもしろいのがジョロウグモ。下が雌で上が雄。背後からこそっと、時々足先を重ねたり機嫌を損ねないように慎重に近づく。なにせ雌の虫の居所が悪ければ、獲物として食べられてしまうのだ。辛抱強く見守っていたのだけれど、しびれを切らして結末は見ないまま。そのうちいつか見極めたい。