コラム◎ 大濠の季節 補遺 勝瀨志保

小満 しょうまん 5月21日

ふと見上げたイスノキの梢に無数の赤い虫こぶがあった。虫友がヨシノミヤアブラムシが作ったイスノキエダイボフクロフシだと教えてくれた。一匹のアブラムシが木組織を変性して空洞のこぶを作り始める。同時に雄なしで次々と増殖し、翅のない成虫が五十から二百に達したところで、翅のある成虫が生まれ始めて五百から二千に急増する。そして四月後半ごろ外壁に穴を開けて新天地に旅立つらしい。そういえば、このこぶの下方にも穴があいている。木をおおうこぶから空恐ろしい数が飛び出したように思えてならない。

一つ虫こぶを見つけたら、あちこちに様々な虫こぶが発達していることに気付く。サクラの葉にリンゴ色の変形が目立つ。これは多分、サクラハベリフクロフシでサクラコブアブラムシの仕業。芽に産み付けられた卵で越冬し、三月ごろかえって新葉に寄生して虫こぶを発達させ、やがて五月下旬にはキク類の根に移動して二次寄生するらしい。

この二つだけでは少し後味が悪いので、口直しにおいしそうに完熟した梅園の梅の実を付け加えよう。今年は例年より肉厚かも。