コラム◎ 大濠の季節 補遺 勝瀨志保
立冬 りっとう 11月7日
噂のゴシップ記事ではないけれど、仰天してしまう大濠在住の蟲の習性を二つご披露しよう。
一つはルリチュウレンジという瑠璃色に輝くメタリックなハチの仲間。ひょろ長い蟲が葉にぶら下がっているなと近づくと交尾中、その先頭にワカバグモ。雄が渡した贈り物を雌が夢中で食べてる間に成就するという仕儀らしい。事が終わると雄はおもむろに触角を整えて、落ちざまに飛び去った。私の蟲の先生、福田治さんが運営するブログ『福岡市の蝶』掲示板にアップすると、ルリチュウレンジは草食だから、クモの餌食になっているのが雌との回答。何てこったと思いは逆転。置き去りにした雄の行為は許し難い。
もう一つは見るからに逞しいオオクロバエ、といってもギンバエよりほんの少し大きいぐらい。だが、その行動力には驚かされる。木枯らしが吹き始めるこの時期、朝鮮半島から対馬海峡を遙々と渡ってくるらしい。この翅で、この体で。教えてくださった九州大学名誉教授の三枝豊平先生は志賀島あたりでその様子を目撃したそうで、海面すれすれを黒い大群となって凄まじい速さで通過していくとか。そして翌春、また群れをなして戻って行くそうな。残念ながら大濠ではすでに解散してて単体しか見かけない。