食卓からアサリが消える日

ユネスコの無形文化遺産に登録された和食。しかし、環境変化や開発により、さまざまな食材が激減している。食材の現状と資源保護への取り組みを現地で直接目にした新聞記者が、危機に瀕する食材の今を描く。

 今日は何を食べようか……。お金がそれなりにあって、食品スーパーなどで食材も比較的幅広い選択肢のなかから選べる。そんな環境で暮らす人々は、幸せかもしれません。でも、これまで手軽に入手できた食材が、急に高くなったり手に入らなくなったりすることになるかもしれません。私たちの命をつなぎ、おいしさや季節感を味わえた魚や貝が消えようとしています。海や川、山の環境が、激変。お金では、買えない自然の恵みが失われつつあります。環境の変化は、私たちが交通の便利さや「生活の豊かさ」を求めて経済活動を進めた「つけ」とも言えるのではないでしょうか。お金が十分なくとも、魚釣りや潮干狩り、山菜採りなど少し努力をすれば自然の恵みで夕飯のおかずを確保できた時代が、過去にはありました。私たちは、そんな環境をないがしろにしたのではないか。そんな思いが頭から離れません。(本書「はじめに」より)
著者略歴
三輪 節生
ミワ・セツオ
1946年熊本県生まれ。1971年東京外国語大学ロシヤ語学科卒業後,朝日新聞社に入社。主に九州・山口の朝日新聞西部本社管内で勤務。このうち,1996年から1999年までは諫早通信局(当時)に勤務。国営諫早湾干拓事業の取材を担当した。60歳の定年退職後も契約社員として勤務。2013年8月に退職。日本自然保護協会自然観察指導員。著書に『ムツゴロウの遺言』(2001年,石風社)がある

食卓からアサリが消える日

四六判 並製/240頁
定価 1870円(本体1,700円)
ISBN 978-4-87415-946-0
C0095
2015年6月発行

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カテゴリー: 文学・記録