バイオマスの利活用は地域づくりそのものである
全国の事例調査を踏まえ、バイオマス利活用事業を成功させるための「地域力」を問い直す。

バイオマスには生ゴミ、木質、畜産など多様な原料とパターンがある。そのそれぞれについて、担う主体と事業生の考え方が異なる。また、地域の資源をもとに発展させていくため、地域にどのようなバイオマス資源、人材リソースなどがあるのかをじっくり検討していかなければならない。つまり、地域の資源と地域の人材にあった適切なバイオマス利用のあり方を考えなければならない。こうした目に見えないもの、地域の人が元気になる、といったものの評価は学術的にもまだまだ確立されてはいない。しかし、本当の意味で地域がバイオマスを活用していくためには、こうした地域におけるバイオマスを核とした発展のスケッチをきれいに描いていくことが求められる。本書に掲載した事例は、いずれもこうした地域におけるバイオマスのスケッチを描いた人の取り組みである。（本書「あとがき」より） 著者略歴

近藤　加代子
コンドウ・カヨコ

九州大学大学院芸術工学研究院環境・遺産デザイン部門准教授（持続社会マネジメント・環境経済）、工学博士。主著：On the influence of spare time and life habits on environmentally conscious behavior: practical knowledge and practical action、 Journal of Environmental Information Science、Vol.35、 No.5、 2007（共著）；「都心部小学校の園芸活動における自然教育の意義と役割　都市的環境と田園的環境における小学生比較調査から」『日本建築学会環境系論文集』第６０１号、２００６年（共著）

大隈　修
オオクマ・オサム

（公財）新産業創造研究機構研究三部（環境・エネルギー分野）部長
専門：重質炭素資源転換工学（石炭・バイオマスなど）、プロセス開発工学、石炭液化など

美濃輪　智朗
ミノワ・トモアキ

（独）産業技術総合研究所バイオマスファイナリー研究センター　研究チーム長
専門：バイオマスの熱化学変換、プロセス／システム設計、バイオマス利活用の経済性・環境性評価技術

堀　史郎
ホリ・シロウ

九州大学国際炭素資源教育研究センター客員教授、資源エネルギー庁国際調査官
専門：エネルギー政策、環境政策

目次

序章　地域力とバイオマス利活用―—成功と失敗に学ぶ
1　自然エネルギーとしてのバイオマス
2　わが国のバイオマス利活用の困難さと地域づくり
3　本書の課題
第1章　事例にみるバイオマス利用の実態
1　バイオマスの種類と資源化の状況
2　家庭系生ごみバイオマスの利活用―—大木町
3　時行啓生ごみバイオマスの利活用——エコフィード
4　木質バイオマスの利活用
5　家畜ふん尿バイオマスの利活用——都城市
［コラム］地域通貨を利用した木質バイオマスの収集
【キーパーソンが語る1】生ごみの分別で地域の一体感・・・境公雄
第2章　バイオマス活用技術と事業性（経済性と実効性）の評価
1　はじめに
2　バイオマス種類と利活用技術
3　バイオマス利活用の事業性と実効性
4　バイオマス利活用事業の事業性（経済性）評価事例
［コラム］湿潤系バイオマスを少尉のエネルギー資源として利用する
第3章　経済的なバイオマスの利活用—―ペレット製造工場を例に
1　ペレット製造工場における事業性の評価
2　ペレット製造工場の事業性に影響を及ぼす要因
3　ペレット製造工場の事業性を向上させるための取り組み
4　ペレット・チップ製造工場における事業性評価のまとめ
［コラム］木質バイオマスの搬出・運搬費について
【キーパーソンが語る2】バイオマスの成功を握る地方力——中越武義
第4章　やり方次第でこんなに違う、環境効果と地方効果——効果を計ろう「バイオマス会計」
1　効果を目に見えるかたちにする「バイオマス会計表」
2　バイオマス会計表の使用例
【キーパーソンが語る3】連携でつくる民間主導のバイオマスタウン・・・森田学
第5章　地域力を計る
1　地域力——行政力・企業力・住民力
2　自治体における地域力と取り組み
3　木質バイオマス事業（民間）
4　家畜ふん尿バイオマス施設（堆肥化施設）
【キーパーソンが語る4】企業システムと地域システム・・・中嶋健造
［コラム］キーパーソンたち——大木町の地上の星空
資料——地域カルテ
小林市／足寄町／別宇美町／真庭市／大木町／JAあさひな／JAたまな／東宇和農業協同組合／岩手江刺農業協同組合／有限会社真貝林工／真庭森林組合／銘建工業株式会社

あとがき
参考資料一覧
編著者一覧