奴国がわかれば「邪馬台国」が見える

果たして、邪馬壹国・博多湾岸という古田武彦説を超え得たか。古田武彦氏が読み解いた「倭人伝」を基に、改めて「奴国」を探究。「奴国」は「なこく」と読むのか、「倭人伝」に記された方位は、そして「里」とは……。すると、その比定地はどこになるのか。

 通説では「奴国」は少なくとも「金印をもらった国」で、倭人伝では、邪馬台国に次ぐ大国と紹介されている。後年は「儺県」や「那の津」として歴史にも登場している立派な国だ。
 古田武彦先生の方法で「倭人伝の魏使の行路」をトレースしなおしますと、「奴国」の本拠地は、福岡で今「早良王国」と呼びならわされている地域だったのです。
 結論だけを拠りだして、提示すれば、やはり古田武彦説は欠陥品だと、早合点されかねません。それで、「奴」の読み方についてくどいほど述べ、行路記事についても、壱岐から唐津にいたり、糸島経由で女王国に至るまでの魏使の行路部分を中心におき、詳しく検証してみました。(本書「あとがき」より)
著者略歴
中村 通敏
ナカムラ・ミチトシ
1935年東京生まれ、1959年九州大学工学部卒。1999年ゼネコン退職後古代史にのめりこむ。 2006年「新しい歴史教科書(古代史)研究会」というホームページと「棟上寅七の古代史本批評」というブログを「棟上寅七」というペンネームで始めて現在に至っている。現在、福岡市在住。古田史学の会・多元的古代研究会・東京古田会・九州古代史の会会員。著書に『私の棟上寅七』・『鏡王女物語』・『七十歳までの自分史』いずれも原書房(私家版)より出版
目次

第一章 「奴国」とは
やよいの風公園と早良王墓/奴国の本拠地は春日市か/武野要子先生の解説は/古代史専門家の意見は/漢字の読み方と辞書について
第二章 金印の中の「奴国」
金印の五文字の読み方/『後漢書』の「倭奴国」の読みは/金印の「奴国」とは?/金印の「奴」の読みは/金印にまつわる謎
第三章 倭人伝の中の「奴国」
『魏志』倭人伝の「奴国」/奴は「な」ではない、古田武彦説/「奴」の上古音は/「奴」は「ド/ト」である可能性はあるか/『魏志』における「奴」の全調査/三世紀の「奴」の読みの結論
第四章 いわゆる「邪馬台国」探しについて
主な邪馬壹(台)国論/論理的な古田武彦説/『魏志』に使われている里/魏西晋朝の短里とは/『周髀算経』「一寸千里の法」から得られた「里」/古田説にまつわるあれこれ/神津恭介氏のパクリ問題/安本美典氏と古田武彦説/倭人伝の方位について
第五章 魏使の行路の検証
倭人伝の行路記事の定説と古田説/検証スタート末盧国/東南陸行五百里とは/古田武彦説の各国の比定地/比定地の資格基準
第六章 奴(ぬ)国探し
奴国探し開始/奴国は糸島平野にあったのか/末盧国から伊都国へのルート再検証/今宿近傍を伊都国と比定した場合の問題は/戸数問題からみた伊都国/今宿あたりの考古学的遺物などは/不彌国について/「戸」と「家」どちらが人口単位として大きいのか/「戸と家」問題についてのまとめ/不彌国と邪馬壹国との位置関係は
第七章 「奴国」はここにあった
「奴国」情報の整理/類縁地名について/古田説で室見川流域が奴国領域とならなかったのはなぜか/邪馬壹国のありか/まとめとして
第八章 倭人伝と『記・紀』の接点
もう一つの奴国/倭人伝の年紀の記事と神武の活躍期/倭人伝の大倭と古代天皇の関係

参考文献
あとがき


奴国がわかれば「邪馬台国」が見える

四六判 並製/242頁
定価 1760円(本体1,600円)
ISBN 978-4-87415-914-9
C0021
2014年9月発行

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カテゴリー: 歴史・民俗