落葉して根に帰る

満州にとり残された少年の戦争と戦後
時代に翻弄された苛酷な庶民の歴史が、驚くべき記憶力と少年のナイーブな視線によって捉えられている。「歴史を軽んずるものは将来を誤る」。著者の生涯をかけた批判は戦争に傾斜する安倍政権へ真っ直ぐに向かっている。
鎌田慧(ルポライター)
著者略歴
長谷川 忠雄
ハセガワ・タダオ
1933年、ブラジル・サンパウロ生まれ。1940年秋に帰国後、同年初冬に中国黒竜江省富錦県へ家族とともに移住。1945年8月9日、ソ連軍の侵攻にあい、富錦街より避難。命がけの逃避行の途中で姉2人と生き別れたうえに両親を匪賊に殺害され、弟と2人中国に取り残される(著者12歳、弟10歳)。宝清県日本人収容所に収容され、のちに東北民主聯軍に参加。1953年3月に帰国。造船会社や商社勤務を経て、現在に至る。今は得意の中国語を活かし、通訳のボランティアなどで活躍する。
目次

プロローグ
 私の生い立ち
 両親たちの貧困との闘い

新天地を求めて
 ブラジル移民
 神戸からの渡米
 ブラジル生活の思い出
 さようならブラジル
 はじめて見る祖国・日本

満州での暮らし
 赤い夕陽の満州へ
 国境の町・富錦
 兄たちへ徴兵令状が届く
 日本軍人の横暴
 ドイツ降伏後、世情騒然となる
 ソビエト軍の侵攻と満州国崩壊
 地下弾薬庫での修羅場
 地下室から決死の脱出
 中国人青年との邂逅と武装農民の襲撃
 両親の死

収容所から製粉工場へ
 銃殺寸前で救われた命
 宝清の収容所へ
 極寒を前に収容所解散
 宝清よ、さようなら

解放軍での日々
 解放軍での生活
 解放軍の反転攻勢
 堂々の北京城入城
 中華人民共和国の成立
 日本へ文通はじまる
 国府軍天津城外の守り
 朝鮮戦争の勃発

帰国、そして慰霊行へ
 夢に見た日本への帰国
 通訳という仕事
 戦後半世紀経てからの慰霊行


落葉して根に帰る

A5判 並製/228頁
定価 1980円(本体1,800円)
ISBN 978-4-86656-038-0
C0095
2018年10月発行

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カテゴリー: 文学・記録