田中正造と松下竜一
人間の低みに生きる著者 新木 安利
松下さんは豊前地方に住む人なら誰でも知っている「いのちき」ということを実践した人だと思う。清貧の思想と言うより、清貧の現実を、主張を枉げず、同調圧力に屈せず、人間の低みを生きぬいた人である。現代のヴァニティーフェア(虚栄の市・虚偽の繁栄)を逆照射する灯台のようである。それは言い換えれば「暗闇の思想」であり、「いのちきの思想」であり、「ビンボーの思想」であり、老子以来の「知足の思想」であり、龍安寺の蹲(つくばい)が「吾唯足知」と銭形で言ったところでもある。(本書「松下竜一の文学と社会化」より)
書評:渡良瀬川研究会・赤上剛(町田市立自由民権資料館紀要『自由民権』31号より) 著者略歴
- 新木 安利
アラキ・ヤストシ 1949年、福岡県椎田町(現・築上町)に生まれる。北九州大学文学部英文学科卒業。元図書館司書。1975年から『草の根通信』の発送を手伝う。
【著書】『くじら』(私家版,1979年)、『宮沢賢治の冒険』(1995年)、『松下竜一の青春』(2005年)、『サークル村の磁場』(2011年)、『田中正造と松下竜一』(2017年)、『石原吉郎の位置』(2018年)、『石川啄木の過程』(2019年、いずれも海鳥社)
【編著書】 前田俊彦著『百姓は米を作らず田を作る』(海鳥社,2003年)、『勁き草の根 松下竜一追悼文集』、(草の根の会編・刊,2005年)『松下竜一未刊行著作集』全五巻(海鳥社,2008年~2009年)
松下竜一の文学と社会化
清き空気を、深き緑を、美しき海を
〈民衆の敵〉と〈ランソの兵〉
1、民衆の敵/2、足尾銅山鉱毒事件/3、水俣病事件/4、土呂久鉱毒事件/5、豊前環境権裁判1 〈ランソの兵〉/6、豊前環境権裁判2 〈民衆の敵〉/7、〈運動のことば〉・〈存在のことば〉/大山・津和野にて
戦殺/被戦殺
村田久の闘い
福沢諭吉の権謀
田中正造の受難
1、自由民権 /2、渡良瀬川と足尾銅山/3、谷中村と「広き憲法」/4、それから
田中正造略年譜
松下竜一略年譜